琉球大学工学部工学科社会基盤デザインコース

研究活動紹介

本コースの紹介動画はこちらからどうぞ。

 

第6回:微生物の生態や機能を研究することで、環境を守り、人の暮らしを豊かにする:環境衛生工学研究室

本研究室は、共同利用施設・熱帯生物圏研究センターの研究室として、亜熱帯沖縄地域の環境微生物を対象とした研究を推進するとともに、卒業研究生の受け入れを通して工学部・社会基盤デザインコースの教育にも携わっています。

本研究室で対象とする微生物は、私たちの体内や身の回りの環境はもとより、大深度地下圏や温泉といった極限環境まで、地球上のいたるところに生息しています。微生物は各々の環境で他の生物と相互作用するとともに、様々な物質を代謝することで環境自体にも影響を与えています。また、多様な物質の生産性や分解性は発酵食品の製造や環境修復など、人の暮らしにも役立てられています。

本研究室では、小さいながらも地球環境や人間社会に大きな影響を与えうる微生物について、生理学的解析からゲノム情報の解析までをとおして基礎から応用までの幅広い研究を展開しています。

具体的に以下のような研究テーマに取り組んでいます。

(1) 下水処理プロセスで水の浄化を担うとともに、下水からバイオガス(メタン)を生産する原生動物の代謝基盤の解析を行っています(図1)。

(2) アルカン成分を分解できる微生物を収集し、石油成分で汚染された環境の修復へ役立てる研究を進めています。

(3) サンゴの生育を阻害する農薬を効率的に分解する微生物について、その代謝メカニズムを明らかにするとともに、サンゴ礁保全に役立てる研究を展開しています。

(4) サンゴとその共存微生物の関係を探ることで、地球温暖化による高い海水温へのサンゴの環境適応に、サンゴ共存微生物がどのように寄与するのかを調べています(図2)。

文責:新里尚也 2020.11.7

 

原生生物
図1 メタン生成菌を細胞内に共生させる原生動物
サンゴ
図2 共存細菌を解析しているサンゴの群体

 

第5回:人と環境に優しい長持ちするコンクリート構造物への挑戦:建設材料学研究室

沖縄県は、国内唯一の亜熱帯海洋性気候におかれ、1年を通して高温多湿、海からは冬季風浪と台風により多くの塩分が供給される環境です。このような環境に構造物を建設する場合、環境に適した材料開発など出来るだけ長持ちする材料の選定が必要です。また、建設後には、構造物を適切に維持管理する必要があります。適切な構造物の材料設計・維持管理を行うためには、高度な点検・診断技術、モニタリング技術の検討、また、それらの技術から得られた情報を入力値とした未来の状態を予測するシミュレーション技術などを通して構造物の状態を把握することが必要です。

以上のことから、本研究室では、コンクリート構造物を対象に、以下に示す2つの大きなテーマに関する研究に取り組んでいます。

(1) 環境負荷低減を考慮した高耐久性材料の開発・性能評価

(2) 高度な点検・診断、モニタリング技術、劣化予測シミュレーション技術の開発

(1)については、石炭火力発電所、バイオマス発電所から発電時に産出されるフライアッシュ(燃焼灰)や、サトウキビの製糖過程で産出される残渣(バガス)・残渣灰(バガスアッシュ)を用いた環境負荷低減を考慮した材料の開発を行い、強度発現特性、セメント化学的な視点に基づいた材料分析、実環境での長期暴露試験などを通して高耐久性な材料開発と、その性能評価を行っています。

(2)については、構造物の点検・診断・モニタリング技術として、X線を利用した技術、デジタル打音検査技術、ひび割れ画像解析技術などの新技術の活用方法の検討、また、コンクリート構造物の劣化予測シミュレーション技術の開発など、状態把握と劣化予測に関する技術開発を行っています。

次回以降の研究活動報告では、上記に示した個々の内容を紹介していきたいと思います。

文責:建設材料学研究室 2020.10.11

 

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図1 人と環境に優しい長持ちするコンクリート構造物への挑戦

 

第4回:沖縄の厳しい腐食環境を逆手に取る!新防食技術の開発:構造設計工学分野

沖縄は亜熱帯気候に属し、一年中高温多湿環境下にあります。また、平均風速が年間を通じて5ⅿ/sと速く、さらに周囲を海に囲まれているため、波が砕けた際に放出される海塩粒子が内陸部まで飛来するため、沖縄の橋や建物などの構造物の腐食は著しく、他の日本地域と比較しても、その腐食の進行速度は5倍から10倍程度速くなります。そこで、社会基盤デザインコースの構造設計工学研究室では、この厳しい腐食環境を逆手に取り、鋼鉄製の構造物の塩害に対する防食技術開発の最前線として、研究開発を行っています。

開発している技術の1つに「コールドスプレー技術(CS)」があります。これはロシア科学アカデミーで発見された表面処理技術で、金属材料の融点または軟化点より低い温度のガスをスプレーガン内部で超音速域まで加速させ、ガス内部に混入した金属粉体を対象鋼材面に衝突させ積層させる低温低圧型の金属溶射技術です。私たちの研究室では、この技術を構造物の補修への適用について検討を行っており、犠牲防食効果を持つ亜鉛粉体と素地調整効果が期待できるアルミナ粉体の混合粉体を用いて金属表面上に積層させることで、既存の防食補修技術と比べて高い防食性能を示すことを明らかにしています。現在は、実際の橋にこの技術を適用し、その性能の検証も行っています。このような沖縄の過酷な腐食環境に耐える塩害対策技術を確立し、日本国内はもとより東南アジアや大洋州など海外への展開も視野に研究に取り組んでいます。

文責:構造設計工学研究室 2020.9.7

 

低温低圧型金属溶射の装置
図1 低温低圧型金属溶射(CS)の装置
CS皮膜
写真1 CS皮膜(電子顕微鏡写真)
鋼鉄製の橋桁でのCS施工
写真2 鋼鉄製の橋桁でのCS施工

 

第3回:琉球諸島の地盤環境と世界遺産を守る:地盤環境工学分野

琉球諸島は、日本列島の南西部に位置し、琉球弧を挟み東側に琉球海溝、西側に沖縄トラフが控えており、地震活動の活発な地域の一つとなっています。この地域における地盤工学的問題は、主として琉球石灰岩層および島尻層群に関係していることが多くなっています。

琉球石灰岩層に存在する鍾乳洞は観光あるいは戦争遺跡として多くの人が訪れる場になっていることが多く、その安全性の確認が重要になってきています。また、島尻層群に存在する防空壕も時間の経過とともに風化が進んでおり、最近首里城下の旧日本軍司令部壕の公開が議論されていますが、同様な防空壕が沖縄各地に現存しており、その保存方法が検討課題です。さらに、沖縄には世界遺産に登録されている5つのグスク(城)をはじめとして、数多くの石積み構造物が残されています。これらの多くは,琉球石灰岩層および島尻層群上に建設されており、これらの地盤の劣化や風化現象により、貴重な石積み構造物の破壊が進行しています。

このような、岩盤構造物の安定性を評価する際には、室内試験で得られる岩石の力学特性だけではなく、岩盤としての特性評価が必要になります。ボーリングで得られたサンプルを用いた評価だけではなく、ボアホールカメラの情報を取り入れるなど、より正確な岩盤の評価を取り入れながら、研究に取り組んでいます。

文責:伊東孝(地盤環境工学分野 教授) 2020.8.12

 

安定性評価が必要な鍾乳洞
写真1 安定性評価が必要な鍾乳洞
世界遺産に登録されているグスク
写真2 世界遺産に登録されているグスク

 

第2回:琉球の空と海に、川と沿岸のデザインを添える:水圏環境工学分野

日本列島の南端部に位置し、日本で唯一、亜熱帯地域に位置する琉球大学において、社会基盤デザインコースの水圏環境工学研究室では、海洋性の大自然を工学的に研究対象としており、研究室や実験室での研究にとどまらず、沖縄県の持つ地理的及び自然環境的特性を活かして、海、山、川のフィールドを直接的に教育や研究に取り入れ、最新のコンピュータシミュレーション技術を駆使しているところが特色として挙げられます。さらには、こうした教育と研究成果を活かし、地域から日本全体の自然環境特性への反映、社会基盤のデザインと防災、あるいは地球規模の問題解決への取り組みへも対象を広げていけるのも、南国琉球という位置ならではの教育環境と言えます。

現在の研究対象をいくつか具体的に上げると、沿岸での流れ及び生態系のフィールド調査、河川のフィールド調査、日本の大学としては最大規模の造波水路を用いた波浪実験、スーパーコンピューターを用いた洪水解析、土石流など水と土砂の流れの数値シミュレーション、津波シミュレーション、海洋構造物の創造、サーフィンに適した波創り、海洋エネルギー開発、津波防災研究等などがあり、多様なアプローチで研究を進めています。これらの成果は、洪水への対応、土石流への対応、津波や高波などの防災技術の開発、自然環境に配慮した新しい海岸の保全技術やビーチ設計、川づくり、砂防技術の技術開発や企画提案などに活かされています。

文責:福田朝生(水圏環境工学分野 准教授) 2020.7.10

 

水圏環境工学研究室

 

第1回:環太平洋地域のビーチタウンにおける津波減災対策:社会システム計画学分野

2004年のインド洋大津波では、22万人以上の死者・行方不明者が出ました。震源地に近いインドネシアのバンダ・アチェでは6万人が犠牲となりましたが、海岸から500m以内は居住禁止という政府方針は守られず、今では8万人が暮らすようになっています。

津波からの復興状況を調べるため、2020年3月にスリランカを訪れました。インド洋大津波で大きな被害が出た南部のウェリガマというビーチタウンです。ここでも既に海の近くまでリゾートホテルや住宅が建設されていました。調査をしていて一つ気がついたことがあります。ウェリガマの主要産業である観光の最大の目玉はサーフィンですが(写真1)、実は東日本大震災で大きな被害を受けた福島県の海岸線も良い波が立つことで有名でした。つまり、津波が高くなりがちな地形は、サーフィンにも適していたというわけです。

東日本大震災以降、日本では巨大な防潮堤が建設されてきましたが、ハワイではハリケーンによる高潮被害の際に住民が防潮堤建設に反対したため(海とのつながりを重視したため)、新規の住宅は高床式とすることを義務化しています (写真2)。地震が起こりやすい環太平洋地域において、ビーチあっての観光地や漁を生業とする漁村では巨大な堤防で海とのつながりを断ち切るわけにはいきません。そうした地域では、ハワイのような高床式住宅と海岸林を組み合わせたソフトな津波減災対策が適しているのかもしれません。

文責:安藤徹哉(社会システム計画学分野 教授) 2020.6.3

 

スリランカサーフ
写真1 スリランカ・ウェリガマのサーフシーン
ハワイ高床式住宅
写真2 ハワイ・カウアイ島の高床式住宅

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