琉球大学工学部工学科社会基盤デザインコース

研究活動紹介

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第4回:沖縄の厳しい腐食環境を逆手に取る!新防食技術の開発:構造設計工学分野

沖縄は亜熱帯気候に属し、一年中高温多湿環境下にあります。また、平均風速が年間を通じて5ⅿ/sと速く、さらに周囲を海に囲まれているため、波が砕けた際に放出される海塩粒子が内陸部まで飛来するため、沖縄の橋や建物などの構造物の腐食は著しく、他の日本地域と比較しても、その腐食の進行速度は5倍から10倍程度速くなります。そこで、社会基盤デザインコースの構造設計工学研究室では、この厳しい腐食環境を逆手に取り、鋼鉄製の構造物の塩害に対する防食技術開発の最前線として、研究開発を行っています。

開発している技術の1つに「コールドスプレー技術(CS)」があります。これはロシア科学アカデミーで発見された表面処理技術で、金属材料の融点または軟化点より低い温度のガスをスプレーガン内部で超音速域まで加速させ、ガス内部に混入した金属粉体を対象鋼材面に衝突させ積層させる低温低圧型の金属溶射技術です。私たちの研究室では、この技術を構造物の補修への適用について検討を行っており、犠牲防食効果を持つ亜鉛粉体と素地調整効果が期待できるアルミナ粉体の混合粉体を用いて金属表面上に積層させることで、既存の防食補修技術と比べて高い防食性能を示すことを明らかにしています。現在は、実際の橋にこの技術を適用し、その性能の検証も行っています。このような沖縄の過酷な腐食環境に耐える塩害対策技術を確立し、日本国内はもとより東南アジアや大洋州など海外への展開も視野に研究に取り組んでいます。

文責:構造設計工学研究室 2020.9.7

 

低温低圧型金属溶射の装置
写真1 低温低圧型金属溶射(CS)の装置
CS皮膜
写真2 CS皮膜(電子顕微鏡写真)
鋼鉄製の橋桁でのCS施工
写真3 鋼鉄製の橋桁でのCS施工

 

第3回:琉球諸島の地盤環境と世界遺産を守る:地盤環境工学分野

琉球諸島は、日本列島の南西部に位置し、琉球弧を挟み東側に琉球海溝、西側に沖縄トラフが控えており、地震活動の活発な地域の一つとなっています。この地域における地盤工学的問題は、主として琉球石灰岩層および島尻層群に関係していることが多くなっています。

琉球石灰岩層に存在する鍾乳洞は観光あるいは戦争遺跡として多くの人が訪れる場になっていることが多く、その安全性の確認が重要になってきています。また、島尻層群に存在する防空壕も時間の経過とともに風化が進んでおり、最近首里城下の旧日本軍司令部壕の公開が議論されていますが、同様な防空壕が沖縄各地に現存しており、その保存方法が検討課題です。さらに、沖縄には世界遺産に登録されている5つのグスク(城)をはじめとして、数多くの石積み構造物が残されています。これらの多くは,琉球石灰岩層および島尻層群上に建設されており、これらの地盤の劣化や風化現象により、貴重な石積み構造物の破壊が進行しています。

このような、岩盤構造物の安定性を評価する際には、室内試験で得られる岩石の力学特性だけではなく、岩盤としての特性評価が必要になります。ボーリングで得られたサンプルを用いた評価だけではなく、ボアホールカメラの情報を取り入れるなど、より正確な岩盤の評価を取り入れながら、研究に取り組んでいます。

文責:伊東孝(地盤環境工学分野 教授) 2020.8.12

 

安定性評価が必要な鍾乳洞
写真1 安定性評価が必要な鍾乳洞
世界遺産に登録されているグスク
写真2 世界遺産に登録されているグスク

 

第2回:琉球の空と海に、川と沿岸のデザインを添える:水圏環境工学分野

日本列島の南端部に位置し、日本で唯一、亜熱帯地域に位置する琉球大学において、社会基盤デザインコースの水圏環境工学研究室では、海洋性の大自然を工学的に研究対象としており、研究室や実験室での研究にとどまらず、沖縄県の持つ地理的及び自然環境的特性を活かして、海、山、川のフィールドを直接的に教育や研究に取り入れ、最新のコンピュータシミュレーション技術を駆使しているところが特色として挙げられます。さらには、こうした教育と研究成果を活かし、地域から日本全体の自然環境特性への反映、社会基盤のデザインと防災、あるいは地球規模の問題解決への取り組みへも対象を広げていけるのも、南国琉球という位置ならではの教育環境と言えます。

現在の研究対象をいくつか具体的に上げると、沿岸での流れ及び生態系のフィールド調査、河川のフィールド調査、日本の大学としては最大規模の造波水路を用いた波浪実験、スーパーコンピューターを用いた洪水解析、土石流など水と土砂の流れの数値シミュレーション、津波シミュレーション、海洋構造物の創造、サーフィンに適した波創り、海洋エネルギー開発、津波防災研究等などがあり、多様なアプローチで研究を進めています。これらの成果は、洪水への対応、土石流への対応、津波や高波などの防災技術の開発、自然環境に配慮した新しい海岸の保全技術やビーチ設計、川づくり、砂防技術の技術開発や企画提案などに活かされています。

文責:福田朝生(水圏環境工学分野 准教授) 2020.7.10

 

水圏環境工学研究室

 

第1回:環太平洋地域のビーチタウンにおける津波減災対策:社会システム計画学分野

2004年のインド洋大津波では、22万人以上の死者・行方不明者が出ました。震源地に近いインドネシアのバンダ・アチェでは6万人が犠牲となりましたが、海岸から500m以内は居住禁止という政府方針は守られず、今では8万人が暮らすようになっています。

津波からの復興状況を調べるため、2020年3月にスリランカを訪れました。インド洋大津波で大きな被害が出た南部のウェリガマというビーチタウンです。ここでも既に海の近くまでリゾートホテルや住宅が建設されていました。調査をしていて一つ気がついたことがあります。ウェリガマの主要産業である観光の最大の目玉はサーフィンですが(写真1)、実は東日本大震災で大きな被害を受けた福島県の海岸線も良い波が立つことで有名でした。つまり、津波が高くなりがちな地形は、サーフィンにも適していたというわけです。

東日本大震災以降、日本では巨大な防潮堤が建設されてきましたが、ハワイではハリケーンによる高潮被害の際に住民が防潮堤建設に反対したため(海とのつながりを重視したため)、新規の住宅は高床式とすることを義務化しています (写真2)。地震が起こりやすい環太平洋地域において、ビーチあっての観光地や漁を生業とする漁村では巨大な堤防で海とのつながりを断ち切るわけにはいきません。そうした地域では、ハワイのような高床式住宅と海岸林を組み合わせたソフトな津波減災対策が適しているのかもしれません。

文責:安藤徹哉(社会システム計画学分野 教授) 2020.6.3

 

スリランカサーフ
写真1 スリランカ・ウェリガマのサーフシーン
ハワイ高床式住宅
写真2 ハワイ・カウアイ島の高床式住宅

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